障害年金にはどのようなデメリット・メリットがあるの?|社労士が解説

障害年金の申請を考えていらっしゃる方の中には障害年金を受給することのデメリットについても気になる方もいらっしゃると思います。

そこで本日は障害年金のデメリットに加え、メリットについても見ていきたいと思います。

目次 

障害年金の6つのデメリットについて

障害年金の5つのメリットについて

障害年金の注意点

結論

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障害年金の6つのデメリットについて

その1:法定免除を申請した場合、65歳以降に支給される老齢基礎年金が低額になる?

1級又は2級の障害年金を受給されている方は国民年金保険料の法定免除を受けることができます。
(※障害が回復傾向を見せ、3級にも該当しなくなった期間が3年続いた場合は、その時点で法定免除の対象ではなくなります。)

国民年金保険料が免除になると、当然免除を受けた期間に対応する老齢基礎年金の金額が保険料を全額納付した場合と比べて半分になります。
したがって、法定免除を受けた場合、65歳から支給される老齢年金が低額になります。

しかし、法定免除の対象であっても任意で保険料を納付することもできますので、あまり大きなデメリットとは言えないと思います。

 その2:生活保護との調整がある?

生活保護受給中の方が障害年金も併せて受給したいとご相談がよくあります。
障害年金を受給できれば生活保護+障害年金になると誤解されているからだと思います。

ただ実際は、生活保護と障害年金と両方受給できてもトータル支給額は変わりません
それは、障害年金で受け取った額と同じ額が生活保護から減らされるからです。

また、障害年金の遡及請求が認められた場合、最大で5年分の障害年金が支給されることになりますが、その期間に支給されていた生活保護費を返納することになります。

また障害年金受給額が生活保護支給額より多い場合、生活保護は支給されません

このように障害年金と生活保護は調整される関係にあります。
従いまして生活保護費+障害年金とはなりません

その3:傷病手当金との調整がある?

大きな病気やケガによって、会社を休業しなければならなくなった場合の公的な社会保障として「障害厚生年金」と「傷病手当金」があります。
(会社の社会保険に加入していることが条件となります)

※傷病手当金とは、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた健康保険の制度の一つで、 被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。病気やケガが連続して4日以上継続して会社を休んでいる時に4日目より支給されます。

「障害厚生年金」も「傷病手当金」も休業して収入が無くなってしまった場合、この2つの保障は、金銭面での大きな支えとなります。
ただし障害厚生年金と傷病手当金を重複して受給している期間がある場合は、満額を受け取ることができなくなる可能性がありますので十分注意が必要です。

詳しく見てみたいと思います。

1)傷病手当金の日額が障害年金の日額よりも多い場合

障害厚生年金が満額支給され傷病手当金は(本来の支給額―障害厚生年金の支給額を引いた残りの差額のみ支給されます。

2)傷病手当金の日額が障害年金の日額よりも少ない場合

障害厚生年金が満額支給され傷病手当金は全額支給停止になります。
(注意)これはあくまで傷病手当金と障害年金の額調整が取れた場合になります。

しかし障害年金の審査は数カ月かかりますので以下のようなケースも当然あります。

同一傷病で傷病手当金と障害年金を同時にもらってしまったケース(返還義務あり)
従って傷病手当金を受給している方が障害年金の請求をされる場合は傷病手当金の返金のことも視野に入れて請求する必要があります。
この上の二事例はあくまで「同一(どういつ)の傷病(しょうびょう)」によるものになります。

例外)傷病手当金と障害厚生年金の元々の傷病が「同一ではない場合」は支給の調整はありません。従って傷病手当金と障害年金を同時に満額受け取ることが出来ます。現在傷病手当金を受給中で今後、障害年金の申請を考えているという方は事前にチェックして、時期が重なる可能性の有無、返還の義務の有無、併給調整されずに満額支給されるなどを確認しておいた方がよいと思います。

その4:死亡一時金・寡婦年金が受給できない?

老齢基礎年金の保険料納付要件を満たす方が65歳前に老齢基礎年金を受けることなく死亡した場合には、一定の要件を満たす遺族に対して死亡一時金や寡婦年金(※)という遺族給付が支給されます。しかし、障害基礎年金を受け取っている方が65歳前にご自身の老齢基礎年金を受け取る前に死亡した場合は、寡婦年金や死亡一時金は支給されません。

寡婦年金は…自営業者として25年以上、国民保険料を納付した後に亡くなった場合に、配偶者が受け取ることができるお金です。寡婦年金は障害年金をもらわなかった場合でも、最長5年間しか支給されません。
これに対して、障害年金を受給する場合、場合によっては一生涯受給することができます。
このように考えると、通常は、障害年金を受給するメリットが寡婦年金不支給のデメリットを上回ります。

死亡一時金…自営業者で国民年金に加入している場合、あなたが亡くなった後に、家族に、「死亡一時金」というお金が支給されます。死亡一時金はあなたが自営業者として3年以上、国民保険料を納付した後に亡くなった場合に、あなたの家族が受け取ることができるお金になります。
そのため、あなたが障害年金をもらった場合は、家族に死亡一時金は支給されません。
また死亡一時金は寡婦年金とあわせて受給することはできず、寡婦年金か死亡一時金のどちらかを選択することになります。
死亡一時金は最大でも「32万円」で1度きりのお金です。
一方、障害年金の額は最低でも月額「約5万円(障害厚生年金3級の最低保証額)」です。
そのため、あなたが障害年金を請求してから7か月以内に亡くならない限り、あなたが障害年金を受給した額のほうが死亡一時金よりも多くなります。
なので、通常は、障害年金を受給するメリットが死亡一時金不支給のデメリットを上回ります。

その5:社会保険の扶養から外れる可能性がある?

健康保険の通常の扶養控除では収入が130万円以上になると世帯主の扶養から外れますが、障害年金を受給している場合は、その金額が180万円以上となります。
障害年金は非課税ですが、健康保険の扶養の計算では収入に加算されます。つまり、障害年金と他の所得の合計が180万円以上になると、扶養から外れることになります。

しかし、障害年金を受給するメリットは、その受給額や国民年金の法定免除なども含め、扶養から外れるデメリットを上回ります。
障害年金を加えた収入が180万円前後の方は注意が必要ですが、180万円を超えることが確実で扶養から外れる方も、障害年金のメリットの方が勝ると言えるでしょう。

 その6:配偶者の加給年金が貰えない?

加給年金の対象となっている配偶者が障害年金をもらっている期間は、加給年金は支給されません
しかし加給年金をうけとれなくてもその期間は配偶者ご本人様が障害年金を受け取ることになります。

障害年金の5つのメリットについて

1.国民年金保険料の支払いが法定免除になる?

先ほどお話ししました障害年金のデメリットでもありそしてまたメリットでもあるのですが1級または2級を受給すると、国民年金の支払いは免除となります。これを法定免除といいます。

法定免除期間は半額を支払ったとみなして計算されますので、将来受け取る老齢基礎年金にも半額反映されます。

老齢基礎年金の年金額を満額にしたいときは国民年金保険料を任意で納付することもできます。

また、過去に遡って受給権を発生させた場合、遡及して法定免除となりますので、障害認定日以降に納付済の国民年金保険料は還付を受けることができます。

例えば、障害認定日が5年前で遡及請求が認められた場合、5年間納付した国民年金保険料は還付の対象となります。ただし、希望すれば、還付を受けずその期間を保険料納付済のままにすることができます。

なお、法定免除の対象は国民年金第1号被保険者のみです。会社勤めをしている厚生年金加入者や公務員の第2号被保険者、その第2号被保険者に生計維持されている配偶者である第3号被保険者は法定免除の対象外となります。

2.経済的な不安やストレスが軽減される?

年金という安定した定期収入は気持ちに余裕をもたらします。
これにより金銭に起因する不安やストレスは軽減されるわけですから、病状の回復にも繋がる可能性もあります。

3.就労していても受け取れることがある?

身体障害と異なり精神疾患での障害年金の審査では、就労状況は日常生活場面のひとつと考えられることから、就労していることが審査に与える影響は大きいと言えますが就労=不支給になるわけではないということです。

また障害者雇用など一定の援助や配慮のもとに就労している場合は、障害年金を受け取りながら就労されている方もおります。

4.年金の使い道は自由

生活保護との比較になりますが受け取った年金の使用用途に制限はありません。

5.障害年金に税金はかからない?

障害年金は非課税所得なので、税金がかかりません。

障害年金の注意点

(ア)もらうための条件

納付要件

障害年金を受け取るには、以下の要件を満たす必要があります。

初診日のある月の、前々月までの期間の3分の2以上が、次のいずれかの条件に当てはまっている必要があります。

・保険料を納めた期間(会社員や公務員の配偶者だった期間も含む)
・保険料を免除されていた期間 
・学生納付特例又は若年者納付猶予の対象期間 

簡単にいうと、初診日までの被保険者であった期間のうち、3分の1を超える期間の保険料を滞納していなければ大丈夫です。 
実際に保険料を納めていた期間だけでなく、正式に保険料が免除されていた期間も、障害年金の期間の計算では納めていたものとして扱われます。

上記の要件には当てはまらなくても、平成28年3月31日までに初診日がある場合は、初診日の前日に、その前々月までの1年間に保険料の違法な滞納がなければ要件を満たすことができます。

なお、被保険者でない20歳前の傷病により障害の状態になった方については、保険料納付要件は問われません。

*学生時代の保険料の滞納というケースがとても多いです。学生だからと保険料を滞納していると、仮に卒業してすぐ大きな事故で重い障害を負っても保険料納付要件に引っ掛かり障害年金はもらえなくなってしまいます。この場合忘れずに「保険料の免除申請」をして下さい。

年齢

障害年金は基本的には、老齢年金がもらえる年齢になる前に病気やけがで障害の状態になった方を対象としています。

初診日に国民年金または厚生年金の被保険者であること、または60歳~65歳で日本に在住し、老齢年金の繰上げ請求をしていないこと(繰り上げ請求をすると65歳になったのと同じ扱いになります)、または20歳未満であった(年金制度に加入していなくて当然である)ことがまずは条件となります。

また、障害認定日(基本的には初診日から1年6ヶ月を経過した日、20歳前障害の場合は20歳到達時)に障害の状態でなかった方が、その後状態が悪くなった場合(事後重症)は、65歳の誕生日前に請求しなくてはなりません。

しかし、例えば初診日が年金制度加入中で障害認定日に障害の状態であった場合や昭和61年3月31日までに20歳になった方で20歳時点で障害認定基準の障害年金がもらえる等級に該当する状態であった方(そのことを証明できる診断書の取得が必要です)は、現在65歳を過ぎていても障害年金を請求することができます。

病状

病気やけがの状態が国が定める障害等級に該当する必要があります。

詳しくは日本年金機構の認定基準のページをご覧ください。

(イ)障害年金の申請について

①申請すれば必ず貰えるわけではない

障害年金は申請をすれば必ずもらえるわけではありません。審査によって決定します。

具体的には支給されるための三つの要件があります。

初診日要件、保険料納付要件、障害状態要件になります。

②障害年金は書類審査なので書類作成が重要

申請は書類で行なう必要があり、そのために必要な書類を作成する必要があります。

③書類を多数用意する必要がある

個々により必要な書類は異なりどの書類が必要なのかを自分で選択する必要があります。

④年金事務所と病院のやりとりが発生

初診日の確認後、納付要件を満たしているのかを年金事務所で確認する必要があります。

また申請書類の中に診断書もあるため当然に病院とのやりとりが発生します。

現在と初診の病院が異なる場合には初診の病院にも連絡をしなけれななりません。

⑤受給してからも更新が必要なケースもある

障害年金には永久認定と有期認定があります。

永久認定とは、文字通り、障害の程度が永続的に変わらない(等級が下がらない。)、更新の手続きは不要という意味です(障害の程度が悪くなった場合、別途額改定請求が必要です。)

これに対し、有期認定は、障害の程度が永続的に変わらないとはいえない(回復する可能性がある)ため定期的に更新手続きが必要になります。

結論:障害年金をもらうデメリットは少ない

障害年金をもらうことによるデメリットが存在するのは事実ですがデメリット以上にメリットが大きいことはご説明した通りです。

知識として、障害年金のデメリットを頭の片隅に置いておくことは無駄ではありませんが、そのメリットを正確に認識し、必要以上にデメリットを意識することは避けた方がいいでしょう。

法令の定める等級に該当する傷病があり、受給要件をすべて満たす方は、メリットが大きい障害年金という制度を、有効活用することをお勧めします。

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〇何からはじめたら良いのかわからない方・・・

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など障害年金についてのご相談に乗らせていただいております。

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